仙台にゆかりのあるヴァイオリニスト・千葉さくらさんが、現在住んでお仕事をなさっている南ドイツから、時々お便りを下さることになりました!

♪南ドイツから音楽便り~南ドイツのオーケストラで働くヴァイオリニストが独自の目線でお届けします♪

南ドイツでは9月の2週目から学校が始まり、街では登下校する子供達を多く見かけます。
あまり安定したお天気の日が少なかった今年の夏ですが、8月末から9月頭にかけて30度を超える夏日が続いた時もありました。今、9月半ば以降は落ち着いた過ごしやすい気候の日が続いています。9月16日からミュンヘンで開催されるオクトーバーフェストには世界各地から観光客が訪れ、街は老若男女の民族衣装を身に纏った人々で賑わいます。私は2009年からドイツに住んでいて、最初は2年間の勉強のつもりでしたが、あれよあれよという間に14年が経ちました。最初はカールスルーエ(フランスとドイツの国境の街)で勉強を始めて3年目から劇場で研修生や契約団員をしながら卒業し、2015年からミュンヘンのオーケストラでの活動が始まりました。最近はもう少し違う経験もしてみたいと思ったので、ミュンヘン交響楽団の席を残したまま今年3月からドイツとオーストリアの国境にある街バート・ライヒェンハル(Bad Reichenhall)のオーケストラで10月末まで働いています。

今日はバート・ライヒェンハルのオーケストラについて日本の皆さんに紹介しようと思います。

バート・ライヒェンハルはミュンヘンから南東に約120km、ザルツブルグから南西に約20kmのところに位置し、アルプスの山々に囲まれた森や湖の自然いっぱいの保養地です。古くから塩が採掘され、塩の治癒力を利用した療治施設に多くの人がやってきます。保養に来た人たちが楽しめるようにと1800年代半ばにオーケストラが設立されました。仙台なら、秋保温泉に訪れるお客様のためにオーケストラがある、というイメージかもしれません。

基本的に火曜日から日曜日までは毎日1~2回の保養地コンサートがあり、その他に交響曲を演奏するコンサートや、2ケ月に一度は大きな定期演奏会もあります。保養地コンサートは約1時間。オペラやオペレッタの序曲から始まり、ポルカ、ワルツ、オペラのメロディーを使ったメドレーなど、盛りだくさんのプログラムです。クラシック音楽だけなく、映画音楽やラテン音楽を演奏することもあります。私の普段働いているオーケストラとは全く違う仕事のリズムとプログラムで、最初はかなり戸惑いましたが…今は徐々に慣れてきて、一回一回のコンサートを楽しむこともできるようになってきました。お客様との距離も近く、どんな風に喜んでくださるかを肌で感じられることが演奏者にとってのモチベーションになっていると思います。

この、保養地に専属のオーケストラ(!)があることが非常に重要で、文化と社会が連携している良い循環の中から利益がもたらされている一つの例だと思います。もちろん、時代と共に社会の様々なことがらは変化するでしょうが、この地に根付くオーケストラとして、これからも街と共に発展していって欲しいです。夏は繁忙期なのでオーケストラに休みはなく、とても忙しい8月を過ごしました。シーズン終わりは10月末で、その後11月(丸1ヶ月)がお休みになるそうです。私自身の契約は10月末までですので、11月からミュンヘンのオーケストラに戻ります。

☆千葉さくら(ヴァイオリン)仙台市出身、遠田郡美里町で育つ。3歳よりヴァイオリンを始め、9歳より中新田バッハホール音楽院にて学ぶ。東京藝術大学卒業後渡独、ドイツ・カールスルーエ音楽大学で修士、ソリスト課程修了。第4回バッハホール音楽コンクール最優秀賞をはじめとし数々の国内外のコンクールで受賞。ソリストとして、仙台フィルハーモニー管弦楽団、東京ニューシティー管弦楽団、バーデン=バーデンフィルハーモニー管弦楽団、オーケストラ北日本などと共演。これまでにヴァオリンを照井勢子、小林武史、田中千香士、澤和樹、ナフム・エアリッヒ各氏に師事。2015年よりミュンヘン交響楽団の正団員としてミュンヘンを拠点に活動の傍ら、2023年3月より南ドイツとオーストリア国境に位置するバート・ライヒェンハルのオーケストラと契約し、8ヶ月間第1ヴァイオリンのフォーシュピーラー(兼コンサートマスター)として活動している。